結論から言うと、ポルトガル語の独学は、最初にブラジルとポルトガルのどちらのポルトガル語を学ぶかを決め、教材と単語をその国にそろえて進めるのが近道です。ポルトガル語はブラジルとポルトガルで同じ言語として通じますが、日常の単語、発音、つづり、相手の呼び方に違いがあります。違いを知らずに2つの国の教材を混ぜると、同じものを指す単語を2つずつ覚えることになりかねません。この記事では、スクールに通わず独学でポルトガル語を始める社会人向けに、2つのポルトガル語の違いと、何から始めるかを紹介します。
要点
- 最初にブラジルとポルトガルのどちらのポルトガル語を学ぶかを決め、教材と単語をその国にそろえます。
- バスは ônibus と autocarro、朝食は café da manhã と pequeno-almoço のように、日常の単語ほど2つの国で違います。
- 文法と、パン(pão)やボタン(botão)に残る鼻母音などの土台は共通なので、片方を学べばもう片方も理解できます。
最初に、ブラジルかポルトガルかを決める
どちらを選ぶかは、ポルトガル語を使う相手と場所で決めるのがいちばん確実です。話す人の数ではブラジルが大半を占め、日本で暮らすブラジル出身の人と話したい場合や、ブラジルの音楽やドラマを楽しみたい場合は、ブラジルのポルトガル語が向いています。リスボンやポルトへの旅行や、ポルトガルでの仕事が目的なら、ポルトガルのポルトガル語を選びます。
日本で手に入る教材や動画は、ブラジルのポルトガル語を扱うものが多めです。教材を選ぶときは、表紙や説明に「ブラジル」「ポルトガル」のどちらが書かれているかを確認しておきましょう。どちらを選んでも文法の大部分は共通なので、あとからもう一方に触れても、学んだことが無駄になることはありません。
日常の単語ほど違う
2つのポルトガル語の違いがいちばんはっきり出るのは、毎日使う単語です。バスはブラジルでは ônibus、ポルトガルでは autocarro です。電車はブラジルで trem、ポルトガルで comboio、朝食はブラジルで café da manhã、ポルトガルで pequeno-almoço と言います。スマートフォンなどの画面もブラジルでは tela、ポルトガルでは ecrã、ジュースはブラジルで suco、ポルトガルで sumo です。
一方で、本(livro)、水(água)、テーブル(mesa)、窓(janela)、友達(amigo)など、どちらの国でも同じ単語も数多くあります。単語帳には、選んだ国の単語を書き、もう一方の単語は気づいたときに横に小さく添えておく程度で十分です。最初から両方を同じ重さで覚えようとしないことが、独学を続けるコツです。
発音は、ブラジルのほうが母音がはっきり
発音にも違いがあります。ブラジルのポルトガル語は、母音を比較的はっきり発音するため、日本語話者には聞き取りやすいと言われます。また、ブラジルでは te や de が「チ」「ヂ」に近い音になることが多く、牛乳を意味する leite は「レイチ」のように聞こえます。ポルトガルでは同じ単語が「レイトゥ」に近く、アクセントのない母音が弱く短くなるため、全体に子音が続くように聞こえます。
独学では、選んだ国の音声を中心に聞き、まず耳をそちらに慣らすのがおすすめです。もう一方の発音は、ある程度聞き取れるようになってから、ニュースや動画で少しずつ触れていけば十分です。
つづりのアクセント記号も少し違う
ポルトガル語のつづりは、2つの国のあいだで正書法が統一されてきたため、ほとんどの単語は同じように書きます。ただ、アクセント記号の種類が国によって違う単語が残っています。テニスはブラジルで tênis、ポルトガルで ténis と書き、ジャンルを意味する単語もブラジルで gênero、ポルトガルで género です。ブラジルでは閉じた音を表す ^(シルコンフレクソ)、ポルトガルでは開いた音を表す ´(アセント・アグード)が使われるためで、発音の違いがそのまま記号に表れています。
相手の呼び方と、進行形の言い方
文法の違いで最初に出会うのが、相手の呼び方です。ブラジルでは「あなた」に você を使うのが一般的で、動詞は3人称の形になります。ポルトガルでは親しい相手に tu を使い、動詞は2人称の形になります。教材によって会話例の動詞の形が違って見えるのは、このためです。
もうひとつが進行形です。「〜しているところです」を、ブラジルでは estou fazendo のように動詞の -ndo の形で言い、ポルトガルでは estou a fazer のように a と動詞の原形で言うのが一般的です。どちらも意味は同じなので、選んだ国の言い方で覚え、もう一方は見たときにわかれば十分です。
共通の土台:鼻母音と動詞の活用
違いがある一方で、2つのポルトガル語の土台は同じです。代表的なのが、鼻に抜ける母音(鼻母音)で、-ão のつづりで表されます。日本語の「パン」はポルトガル語の pão から、「ボタン」は botão から入ったと言われる言葉で、どちらも語尾が鼻母音です。日本語話者にとって、ポルトガル語は意外に身近な言語でもあります。
動詞の活用も共通の土台です。ポルトガル語の動詞は、主語と時制によって語尾が変わり、覚える量の多い部分です。ただ、規則的に変わる動詞が多く、-ar、-er、-ir の3つの型を押さえれば、多くの動詞に応用できます。同じように活用の多い言語の進め方は「スペイン語の独学は発音が味方:活用と性の進め方」で紹介しています。スペイン語とポルトガル語は単語も文法も近いので、あわせて読むと違いがよくわかります。
文法は机で、単語は毎日の画面で
ポルトガル語の独学では、動詞の活用や二人称の使い分けなど、机に向かって理解する文法の時間が欠かせません。その時間を確保するためにも、単語はふだんの生活の中で覚えられるようにしておくと効率的です。スマートフォンやApple Watchを見るたびに、選んだ国のポルトガル語の単語が目に入るようにしておけば、ônibus か autocarro かで迷うこともなくなります。毎日少しずつ触れる復習の考え方は「忘却曲線と英単語の復習タイミング」で紹介しています。
Watch Your Languageは、ポルトガルとブラジルのどちらのポルトガル語を学ぶかを選べ、選んだ国の単語をテーマとCEFRレベル別のパックで、iPhoneのウィジェットとApple Watchの文字盤に表示します。まだ覚えていない単語ほど繰り返し見せるので、机に向かう時間は動詞の活用の練習に回せます。
まとめ:国を決めて、単語をそろえる
ポルトガル語の独学は、まずブラジルとポルトガルのどちらを学ぶかを決め、教材と単語をその国にそろえることから始めるのがおすすめです。日常の単語、発音、アクセント記号、相手の呼び方には違いがありますが、文法と鼻母音などの土台は共通です。単語はふだんの画面で何度も目にして覚えれば、机に向かう時間を活用の理解に集中させられます。まずは、自分が使いたいのが ônibus なのか autocarro なのかを決めるところから始めてみてください。Watch Your Languageの機能全体はホームで紹介しています。